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あの橋の向こうに

戸梶圭太・著。実業之日本社・刊。トカジ流現代恋愛小説。
冴えない激安OL・矢追芳美の日常は、ある日、一人の男によって打破される。
彼の名は鈴成。彼との刺激的でセックスしかしない休日が、芳美にとってはただ一つの
楽しみになっていた。だが、そんな彼との連絡も次第に取れなくなり…。

東京都西地域に在住している方には悪いけど、こういう人種が住んでるところなんだなぁ…というのが
トカジ小説を今まで通して読んできた感想です。激安、最低の人間がそろってる感じ。
今回の主人公・芳美も言わずもがな。クソ橋(※作中引用ママ)とも言われる長い長い橋を渡った先に
ある芳美の実家。よくある集合住宅で、周りの人間も、環境も、激安。幹線道路沿いにあるのか
トラックやダンプが飛ばしてきて、排ガスにまみれながら出勤。乗車率は100%を余裕で
振り切っているらしい池袋線に乗り、会社まで更に地下鉄を乗り継ぐ毎日。これだけでもウンザリだと
いうのに、更に滅入るようなルーチンワーク(データ入力)をくりかえす日々。
せっかく出来た彼氏(セフレ?)の鈴成とも連絡がつかなくなり、ますます妄想の日々に
埋没していく芳美。某人をモデルにしたと思しきエボラという著名人の小遣い稼ぎ本にも
引っかかり、美人の妹は芳美とは対照的にますます痩せて、彼氏もいる始末。
最終的に芳美がたどり着いたのは、クソ安い日常を全て棄ててしまう、という結末だった。

…しかし、戸梶さんは色々な人の書き分けが上手いよなぁ…とつくづく思います。
冴えない中年親父から、ナヨナヨ青年、ちんぴらもどき、ギャル、Sっ気の強い女性諸々。
真面目に読むと思い当たる節々があってつらいので(私だけかもしれないけど)
斜に構えて、あくまでもエンタメとして楽しむのが戸梶本なのかもしれません。
この本も恋愛本じゃないしなぁ、正確に言うと…。ラストも予定調和な終わり方っぽいし。
芳美の年齢が三十路近いっていうのも重要かも。女はやっぱり焦るんですかね、この年近いと。
by sinapple | 2009-09-13 13:20 | 感想(本)
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